保険とは、将来にわたる安心を提供してくれるもの。生命保険も自動車保険も、みな同じです。何ごともなければ、その方がいいとも言えるでしょう。
保険はいざというときの備えとして、私たちの生活を安定させ、安心感を届けてくれます。もちろん、医療保険もそうですし、その一種であるがん保険も同様です。
ですがこの安心は、保険に加入するだけでなく、定期的に見直していくことで、さらに確実なものになっていくのです。
1. がん保険の「見直し」って、なにをどうする?
1-1 見直しは必要なのか
近年、「保険の見直し」ということがよく言われます。これは契約している保険の保障内容を見直し、現在の自分の状況や必要な保障に照らし合わせて、常に最善の状態に更新しておくという意味です。
確かに、保険ではこの見直しという作業は重要です。「必須」と言っても良いかもしれません。必要な保障を効率良く、無駄なく維持するためには定期的な見直しが欠かせません。特にがん保険では、今後そうした傾向は強まるでしょう。
実際のところ、最近は「保険を見直してより有利な内容に」とか「保険を見直し、効率的に」というような「保険見直しのすすめ」を、いたるところで目にします。ウェブでちょっと検索してみても、保険の見直しを勧めるページが数多くヒットするようになりました。
ですが、保険というのは洋服のように、毎日着替えるものではありませんし、季節ごとに変えるものでもありません。「見直しってよく聞くけど、本当に必要なの?」そんな疑問をお持ちの方も多いと思われます。
本当のところはどうなのでしょう? 保険の見直しはどうして必要なのでしょうか?
1-2 「見直し」で保険は活きる
結論から言えば、保険の見直しは必要です。というよりも、保険は人生の節目ごとに見直して、最善の内容に更新していくことで、その真価を発揮します。
保険というのは多くの人にとって必要なもので、しかも長いおつきあいになるものです。そしてどのような保険があなたにベストなのかは、その時々によって異なります。その点、住まいと似ているかもしれません。
若い独身の頃は仕事や遊びに夢中になり、家はほとんど帰って寝るだけかもしれません。社会に出たばかりではあまり収入もありませんから、住まいにかけられるお金は限られています。ですから築年数が古くても間取りが少々狭くても、とにかく家賃の安さが優先でしょう。
結婚すると、そうも言っていられません。子どもが産まれたら子ども部屋も欲しくなりますし、さらに言うなら子どもたちにも「一人一部屋」が理想です。やがて子どもたちが成長し、家を出て独立したら、逆に広い家は不要になります。冷暖房の効率は落ちますし、掃除の手間もたいへんでしょう。
さらに高齢になってきたら、夫婦二人が落ち着いて暮らせる、小さくて静かな家がベストになります。
保険も家と同じです。年齢、生活状況、家族構成など、時代とともにあなたの身の上に起こるさまざまな変化に合わせ、保険を見直し、その時々のあなたにベストマッチする保険に乗り換えていくことが必要です。
つまり、変化するあなたのライフステージに合わせて保険もバージョンアップしていくのです。
1-3 あなたの保険をバージョンアップ!
前項で、保険になぞらえて住まいの話をしました。保険、それも医療保険やがん保険というものは、住まいとまったく同じ考え方ができるのです。
若い頃は元気一杯、体の衰えなどありませんから、病気にもあまり縁がありません。そのため「がん保険」と聞いても「ふ~ん、でも僕には必要ないよ」「保険料を払う余裕もないし」で終わってしまいます。
ですが、若い方でもがんになるリスクはありますし、そうなったら治療費や休業による収入減が生活を直撃します。ですから、月々支払う保険料が安いものであっても、保障がいちばん手厚いものを選ぶようにすると良いでしょう。
結婚して家族が増えると、保険料以上に保障内容重視で選ぶことになります。もしものことがあっても家族が困らないよう、広く手厚い保障を用意しておきたいところです。子どもたちが成長して独立したら、ここでも保険見直しの機会です。
年金生活になると月々の保険料は無視できない負担ですし、一方で体は衰え、怪我や病気をしやすくなるものです。ことにがんのリスクは高まりますので、その時のあなたが置かれた状況に合わせた保険に、乗り換えていくべきでしょう。
人生には多くの区切りがあります。嬉しいことも、悲しいこともあるでしょう。そうした人生のひと区切りは、保険を見直し、バージョンアップを図る時期でもあるのです。
残念ながら保険には「これに入っておけば一生安心!」という決定版はありませんから、自分の人生のステージに合わせて、そのつど「“今”の自分にあった保険」に見直していきましょう。
⇒必見!保険の見直しのタイミングと押さえておくべきポイントは?
2. 見直しのポイントはここ!
2-1 自分のニーズに合っているかどうか
「保険を見直すっていっても、どこをどう見直せばいいの?」こんな疑問は出てきて当然です。確かに、その時々の生活状況に合わせて……といっても、具体的なポイントが分からなければ、バージョンアップのしようがありません。
ですが、ここはそれほど難しく考えなくても大丈夫です。まずは自分のニーズに合った保障が組み込まれているかどうかを再確認するのです。
がんに特化したがん保険は、入院・手術・通院治療、さらには先進医療や退院後の療養にまで配慮しており、さまざまな保障が設定されています。それらの保障のうちのいくつかは基本契約に含まれており、いくつかは特約としてオプション扱いになっています。これら多くの選択肢の中から、自分に必要なものをあらためてピックアップしてみましょう。
がん保険の主な保障内容
給付金名(例) | 保障のタイミング | 保障内容の例 |
がん入院給付金 | がんで入院をしたとき | 入院一日につき(日額)5,000円~など 1回・通算の入院日数は(医療保険と違い)制限なし 医療保険とは異なり入院の日数制限なし |
がん手術給付金 | がんで手術を受けたとき | 手術の種類により
入院給付金日額の10・20・40倍など 回数に制限なし |
がん診断(治療) 給付金 | がんと診断をされたとき | 入院日額の100倍など |
がん通院給付金 | 1.がんで所定の期間入院した
前後に通院したとき 2.がんで所定の治療を受ける ために通院したとき |
入院日額と同額など |
退院(在宅)療養 給付金 | がんで入院後、退院したとき | 入院日額の10倍など |
特定治療 給付金 | 抗がん剤やホルモン剤、 放射線など特定の治療を受けたとき | 月額10万円など |
先進医療 給付金 | がんの診断や治療で 所定の先進医療を受けたとき | 技術料と同額など |
(がん)死亡 保険金 | 保険期間中(がんで)死亡したとき | 入院日額の10、100倍など |
生存給付金 | 一定期間経過時(5年ごとなど)や、 保険期間満了時に生存をしている | – |
「先進治療の保障もあったほうがいいかな」「そろそろ、乳がん・子宮がん特約がほしいかも」などなど、それぞれの状況に合わせてチョイスしてください。
もしもの時の保障は幅広いほうが良いのはもちろんですが、あまりに欲張ってしまうと保険料がたいへんなことになってしまいます。一方で、これまでになかった保障が特約で追加されていたり、新しい商品が発売されたりもします。
こうした時代の変化にも目を向けながら、最新の商品情報と見比べつつ、保険の見直しを図りましょう。
⇒医療技術の変化でがん保険はどう変わった? 時代ごとのがん保険の保障内容はコチラ!
2-2 次に保障金額をチェックする
次に大切なのは、それぞれの保障内容の金額がどうかという点です。
保険というものは、必要な保障が必要な額だけ用意されていることで、はじめて効果を発揮します。特約などでいろいろな保障をセットしていたとしても、その金額が充分でなければ役に立たないかもしれません。
診断給付金、入院給付金、退院給付金、先進医療給付金……がん保険が保障する範囲は幅広いのですが、それぞれの保障金額が充分かどうか、それをチェックしていくのです。
もしも今のあなたに預貯金があまり多くなくて、急な出費は厳しいというのであれば、診断給付金を多めにした保険が良いでしょう。あるいは家族のために、自分が入院したときの収入減に備えたいというのなら、入院給付金にボリュームを持たせたものが良いはずです。
このように、現在の自分にとって最も必要な部分に充分な保障があるかどうか、それを目安に見直していくと良いでしょう。
ただし、保障金額はそのまま月々支払う保険料の額に直結します。手厚い保障を付けたとしても月々の支払いが苦しいというのでは、本末転倒というものです。
またライフステージの変化によっては、保障を縮小して保険料を節約したいということもあるでしょう。その場合は保障額をもう一度見直すか、それでもうまくいかない場合には一段階前に戻り、特約などの保障内容を見直すところからやり直すと良いでしょう。
2-3 給付条件も細かくチェック!
保障額を大きくしても、いざというときにそれが支払われなかったとしたら? 「そんなこと、あるわけないじゃないか」と思われるでしょうが、こうしたケースは実際にあります。それはその保険に給付条件が付いている場合です。
たとえば診断給付金。これはがんの診断を受けた時点で給付されるものですが、保険商品の中には「入院や手術が伴う場合」のみ、給付対象とするものがあるのです。つまり、こうした保険では、診断を受けただけでは給付金を受け取ることができません。
また、一度だけしか給付されないものと、診断を受けるたびに給付されるもの、一定年数を経過していれば複数回の給付を受けられるものなど、条件がまちまちで一様ではありません。
さらに、がんの種類によっては給付されなかったり、減額されたりということもあります。「上皮内新生物」というのは明らかにがんの一種なのですが、症状としては軽いもので、治療がたやすく、しかも治療を受ければそのほとんどが治癒します。そのため一般に言われるがん=「悪性新生物」とは保険の上でも分けて扱われることが多いのです。
こうした違いは保険会社あるいは商品によってまちまちです。こうした細かい点についても確認しながら、見直し作業を進めるようにしましょう。
2-4 診断給付金で判断するのも1つの方法
どんな保険にも言えることなのですが、さまざまな特約やオプションを付けていくと「あちらを立てればこちらが立たず」という状態になりやすいものです。
がん保険は数多くの特約が用意されていますから、どれとどれを組み合わせるのがいちばん良いのか、判断に迷うこともあるでしょう。これもほしい、あれも必要……と追加していったら、保険料がとんでもない数字になってしまった、ということも多々あるはずです。そうなると、また振り出しに逆戻りになってしまいます。
新規加入にしろ見直しにしろ、迷ってばかりで決められない……という状態になってしまったら、「診断給付金で決める」というやり方が良いかもしれません。
診断給付金は一般に、入院給付金の1日額の100倍に設定されています。これは診断を受けた段階で受け取ることができますから、当座のさまざまな出費に活用することができます。
ある程度のまとまったお金がすぐに給付されるわけですから、がん保険ではいちばん重要なものでしょう。ですから、ここをしっかりとカバーできる形にしておけば、まずは安心というわけです。
ただし、この診断給付金は保険会社あるいは商品によって、その給付条件や給付回数に違いがあります。ですから、細かな条件にも注意して、最適な選択を行ってください。
3. 保険見直しの具体例
3-1 保険見直しのパターンはいろいろ
さて、ここからはもう少し具体的な話をしていきましょう。
保険の見直しといっても、そのパターンはいくつかあります。
まず、現在加入している保険の保障内容を変更する場合。特約を追加・解除したり、保障額を増減させたりというケースです。他社も含めて、より有利な商品に乗り換える、という場合もあるでしょう。
近年では保険会社各社ががん保険に力を入れており、そのため私たち消費者にとってより魅力的な商品を開発しています。こうした新商品は従来の保険のデメリットを補い、最新の医療技術に合わせて作られていますから、選択肢としてぜひ検討したいところです。
さらに、現在の保険内容を手直ししたうえで、別の保険に新たに加入するという「合わせ技」もあります。保険料の支払いや給付金の請求で少々の手間は増えますが、自分に必要な保障を必要なだけ用意することができます。
3-2 こんなときに見直しを考えよう
他の医療保険と同様、がん保険も「ライフステージが変化したとき」が見直しのタイミングです。
長い人生、いろいろなできごとがありますが、その中で大きく生活状況が変わるポイントがいくつかあります。そうしたポイントの前後では、保険によってカバーするべき範囲やボリュームにも変化が起こります。
このように、人生には多くの節目があり、そのたびに生活状況も変わっていきます。そうしたライフステージの変化は、そのままがん保険の見直しのタイミングです。これからの自分と家族にとって、どんな保障がどれくらいのボリュームで必要なのか、しっかりと検討して見直すようにしましょう。
⇒ライフステージごとの保険の見直し方って!?厳選ポイントはコチラ!
3-3 乗り換えのリスクに注意!
新たに保険に加入したり他社の保険に乗り換えたりする場合に、注意していただきたいことがあります。
それは、乗り換えに伴うリスクです。今まで加入してきた保険を解約して、新たな保険に加入する。当たり前のように見えますが、実はこれは、2つの意味でリスクが高い方法です。
がん保険には「待期期間」というものが設けられています。これは「新規契約の場合、契約から一定の待期期間を過ぎないと保障が開始されない」というものです。つまり待期期間の間にがんが見つかっても、何の保障も受けることができない、ということなのです。
待期期間はおおむね90日とされていますので、契約しても向こう3ヶ月は無保険と同じ状況になってしまうというわけです。この空白期間を埋めるには、まず新規に契約し、待期期間が過ぎたところで、それまで加入していた保険を解約することです。その間は新旧両方の保険料を支払うことになりますが、無保険のリスクを避けるには、この方法しかありません。
もうひとつのリスクは、「新しい保険に加入できないかもしれない」ということです。
がん保険は契約者の健康状態等によって契約の可否が審査されます。ですから早々に旧契約を解約してしまうと、新しい契約の審査が通らなかった場合、もうどうすることもできません。
これらのリスクを避けるためにも、まず新契約を結び、待期期間が過ぎるのをじっと待つ。旧契約の解約は、それから行う。こうした手順を踏むようにしましょう。
まとめ:がん保険の見直しは専門家の意見やランキングも参考に!
がん保険の見直しについて、ひと通りのところをお話ししてきました。
実際にこの作業をやってみると、かなり細かい仕事だということが分かるでしょう。選択肢の幅が多いうえ、こちらを立てればあちらが立たず……ということも多く、つい投げ出したくなることもしばしばだと思います。
といって、いざというときの自分を支えてくれるものだと思えば、ないがしろにもできません。
がん保険は他の保険と同様に、あるいはそれ以上に、日々新しく進化しています。そうした情報を一般の方が正確に把握し続けることは、まず困難でしょう。だからこそ、「そろそろ保険を見直しほうがいいかな」と少しでも感じたのであれば、プロの知恵を借りたりしてみましょう。
保険のプロは、保険の知識はもちろんですが、最新のがん治療に関する詳しい情報も持っています。そうした経験や知識から今のあなたに必要な保険を教えてくれるはずです。