介護について調べていると、「要支援」や「要介護」といった言葉を目にする機会も多いのではないかと思います。何となく字面から「要支援は支援が必要な状態で、要介護は介護が必要な状態なのかな?」とザックリとしたイメージはできるかも知れません。
ですが、「じゃあ、そもそも“支援”と“介護”の違いは?」「なんで“要支援”と“要介護”を使い分けているの?」「それで“要支援”と“要介護”が私たちにどのように関係しているの?」など、一歩踏み込んで考えると新たな疑問が次々と湧いてくるのではないでしょうか。
そこでここでは、
1.要支援と要介護の定義の違い
2.要支援と要介護の違いによって具体的に何が変わるのか
について分かりやすく解説していきます。
1.要支援・要介護ってなんのこと?
1-1 公的介護保険制度で定められた身体の状態を示す指標!
私たちは高齢になるにつれて、徐々に体や思考の自由がきかなくなり、日常生活を送るうえで人の助けを借りなければならない状態になる可能性が大きくなっていきます。もしも、そのような介護が必要な状態になったとき、私たちは公的介護保険を利用することになるでしょう。
公的介護保険は、40歳以上の方が加入を義務づけられている公的保険の一つです。市町村から介護が必要だと認められた方は、身体の状態に応じて公的介護保険から所定の保障を受けることができます。
そして、公的介護保険における、身体の状態の程度を示すための指標が「要支援・要介護」なのです。
基本的には、要支援が「ほぼ一人で日常生活を送れるが、要介護状態への予防として身体の機能を維持・改善する何らかの支援が必要な状態」、要介護が「身体の状態が悪く日常生活を一人で送ることが困難な介護を必要とする状態」だと言えます。
さらに細かく見ていくと、要支援は要支援1~2の2段階、要介護は要介護1~5の5段階に分かれています。先に述べたように、役所からいずれかの区分に認定されると、その段階に応じた公的介護保険の保障を受けられるようになります。
なお、認定を受けることができるのは、1、65歳以上の方、2、加齢による「特定疾病」にかかった40歳~64歳までの方です。
1-2 要支援1~2・要介護1~5はそれぞれどう違う?
要支援・要介護が、身体の程度に応じてそれぞれ要支援1~2、要介護1~5に分かれている事は先程説明しました。では、具体的にそれぞれの区分がどのような状態なのか、詳しく見ていきましょう。
要介護状態への進行を予防するために何らかの支援を要する状態。ほぼ自分で日常の基本動作(食事、着替え、移動、排せつ、入浴など)を行うことができるが、日常の複雑な動作(家事全般、交通機関の利用、服薬・金銭管理など)には支援が必要。
要介護状態への進行を予防するために何らかの支援を要する状態。要支援1と比較して、日常の複雑な動作を行う能力がわずかに低下している。
部分的に介護を要する状態。要支援状態と比べて、さらに日常の複雑な動作を行う能力が低下しており、問題行動や理解の低下も見られることがある。
日常の基本動作にも部分的な介護を要する状態。問題行動や理解低下が見られることがある。
日常の基本動作に全面的な介護を要する状態。いくつかの問題行動および、全面的な理解の低下が見られる。
介護なしでは日常生活が困難な状態。多くの問題行動および、全般的な理解の低下が見られる。
介護なしでは日常生活を送れない状態。多くの問題行動および、全般的な理解の低下が見られ、意思の疎通が困難。
2.要支援と要介護で具体的に何が違うの?
要支援と要介護の違いは、何もその定義だけではありません。上記で示した要支援1~2・要介護1~5の7段階のうち、どの段階に区分/認定されるかに応じて「受けられる介護サービスの種類」や「1割(または2割、現役並みの収入の方は3割)の自己負担額で受けられる介護サービスの上限額」などが変わってきます。
それらが具体的にどのように違うのかを見ていきましょう。
2-1 公的介護保険で受けられる介護(予防)サービスの種類の違い
要支援と要介護では、利用できる介護サービスに違いがあります。
要支援認定を受けた際に受けられるサービスは、おもに要介護状態への進行を予防するための「介護予防サービス」です。それに対して、要介護認定を受けた際に受けられるサービスは、介護を受けるための「介護サービス」になります。
いずれもどこの場所でサービスを受けるかによって、「訪問サービス」「通所サービス」「短期滞在サービス」「居住・入所サービス」<に分けることができます。それぞれの代表的なサービスとしては次の通りです。
○代表的な介護サービス・介護予防サービスの例
介護予防サービス:介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導
介護サービス:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導
介護予防サービス:介護予防通所介護(デイサービス)、介護予防通所リハビリテーション
介護サービス:通所サービス(デイサービス)、通所リハビリテーション
介護予防サービス:介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護
介護サービス:短期入所生活介護、短期入所療養介護
介護予防サービス:介護予防特定施設入居者生活介護
介護サービス:介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設
2-2 1割(または2~3割)の自己負担で受けられる介護(予防)サービスの上限額の違い
先ほど要支援・要介護は細かく見ると、要支援1~2・要介護1~5までの7段階に区分されているとお話しました。
要支援・要介護認定を受けた方は、公的介護保険によって1割(または2割、現役並みの収入の方は3割)の自己負担のみで介護(予防)サービスを受けることができます。残りの介護(予防)サービスにかかった費用のうち7割~9割は、公的介護保険からサービス提供者に支払われる仕組みです。
しかしながら、1割~3割の自己負担で無制限に介護(予防)サービスを受けられるわけではありません。公的介護保険では、7段階の要支援・要介護度に応じて、それぞれ月ごとに利用できる介護(予防)サービスの上限額が設定されています。原則的にその上限額をこえた超過分は、全額自己負担になります。
ですので、7段階の要支援・要介護度ごとに、1割~3割の自己負担で利用できる介護(予防)サービスの上限額がいくらに設定されているのかは、あらかじめ必ず押さえておきたいポイントの1つです。
2-3 介護(予防)サービスの利用手続きの違い
市町村から要支援・要介護認定を受けたら、次に介護(予防)サービスの利用手続きを行う必要があります。
大きく見れば、要支援・要介護のどちらに認定された場合でも、介護や医療の専門知識を持ったプロと相談し、本人や家族の希望に沿って「どの介護(予防)サービスをどのくらい受けるか」を決めるケアプランを作成してもらい、それに基づいて介護(予防)サービスを利用することに変わりはありません。
ただし細かく見ると、要支援・要介護では、介護(予防)サービスの手続きは異なってきます。下記の要支援・要介護ごとの手続きのチャートを確認し、“いざというとき”に慌てふためくことがないよう大まかなイメージを掴んでおきましょう。
○要支援(要支援1~2)の場合の利用手続き
要支援認定を受けた方が介護予防サービスを利用する場合、先ずは地域包括支援センターへ連絡・相談をします。
地域包括支援センターの職員と相談しながら、具体的に利用する介護予防サービスの種類や頻度を決め、介護予防ケアプランを作成します。
介護予防ケアプランに基づき、介護サービス事業者と契約を結び、介護予防サービスを利用します。
○要介護(要介護1~5)の場合の利用手続き
要介護認定を受けた方が介護サービスを利用する場合、まずは居宅介護支援事業者を選んで連絡をします。
その居宅介護支援事業者に属しているケアマネージャーと相談し、本人や家族の意向などを踏まえたうえで、具体的に利用する介護サービスの種類や頻度を決め、ケアプランを作成します。
ケアプランに基づいて、介護サービス事業者と契約を結び、介護サービスを利用します。
まとめ:要支援と要介護の違いとは!
いかがでしたか?
ここまで、
■要支援・要介護は公的介護保険における「どのくらい介護が必要な身体の状態か」を示した指標
■要支援・要介護では、公的介護保険から受けられる介護(予防)サービスの種類と上限が違う
■要支援・要介護では、公的介護保険で介護(予防)サービスを利用するまでの手続きが違う
といった点について解説してきました。
この記事に目を通して頂いたことで要支援と要介護の違いに関してはご理解頂けたのではないかと思います。
ですが、ここで書いたことは介護に関する情報のうちのごく一部に過ぎません。すでに日本は高齢化社会に突入しており、今後、介護をする側/介護をされる側のどちらになるにせよ、誰にとっても介護は避けて通れない問題ではないでしょうか。
そこで保険見直し本舗では、公的介護保険から民間の介護保険まで、より包括的に介護保険に関してご紹介している記事もご用意しております。
是非こちらも併せてご覧いただければ幸いです。