保険商品とは、人生で起こりうるさまざまなリスクに備えるためのもの。
病気や怪我に対する医療保険、万が一亡くなったとき残された家族を守る死亡保険、子どもの教育費のための学資保険、老後の生活のための個人年金保険……と、さまざまな種類があり、それぞれ対象となるリスクをカバーするには非常に有効な方法です。女性保険もこのような保険の1つであり、一般の病気・怪我に対する備えと女性特有の病気等になった時の手厚い保障を兼ね備えた商品となっています。
しかし、このような備えはもちろんタダでできるものではなく、保険を利用するには毎月の保険料という負担を負わなければいけません。そのため保険を選ぶ際は、自分にはどのリスクが大きく、どんなリスクに備えたいのかを考えて、優先順位をつけることが大切です。現在保険に入っている方も、そうやって選ばれた方が多いのではないでしょうか?
ただ、家族構成やライフスタイルが変われば、備えるべきリスクの優先順位も変わります。
そうなると、昔は最適の保険であっても、今のニーズには合わないということが起こるのも仕方の無いこと。そこで、人生の節目では保険を見直し、ニーズに合っていないようなら解約する、不足があるようなら追加するなどの手入れが必要になってきます。
ここでは、ライフサイクルと年代別の病気のリスク、両方の視点から、女性の人生で保険の見直しをするおすすめのタイミングについてお話ししていきたいと思います。
1. 就職後 ~保険を考える最初の機会~
1-1 「就職後」はどんな時期?
親から経済的に独立し自分で生活を始める就職後は、何もかもが新しくなる時期。長期的に自分の人生を考え、どんなリスクがあるのか考えてみるにはぴったりの時期です。
まだ若いので、がんをはじめとする病気のリスクはそれほど考える必要はありません。ただ少し意識したいのは、若い年代から発症する傾向がある、女性特有のがんの存在です。
公益財団法人がん研究振興財団の「がんの統計'18」によると、消化器系・循環器系の多くのがんが40代~50代頃から徐々に増え始め、高齢になるほど発症率が上がるのに対し、乳がんは30代から増え始め40代~60代頃がピーク。子宮がんは20代後半から増え始め50代がピークになっています。
これら女性特有のがんへの備えは、できれば検討しておきたいところです。
ライフサイクルから見ると、まだ結婚や出産をしていない人が大半でしょうから、この時期に最も大きいのは「自分が働けなくなるリスク」だといえます。
親と同居していて、親もまだ現役で働いているというような場合には、病気や怪我で働けなくなったとしてもすぐに生活に困るようなことはあまりないでしょう。しかし、1人暮らしをしている場合、働けなくなるとすぐに生活に影響が出てしまいます。保険を選ぶ際にもそのことを考慮して、単身者は保障を厚めにしておくのがおすすめです。
この時期の特徴として保険料が安いことも上げられます。特に終身保険の場合、保険料は一生変わらないので、これは大きなメリットだといえるでしょう。
1-2 おすすめは終身型の医療保険
以上を総合して考えると、病気や怪我で働けなくなることへの備えとして、基本的な病気・怪我を保障してくれる終身型の医療保険を考えてみるのがよいでしょう。そんなに高価な保険は必要ありませんが、女性特有のがんへの備えも含めて考えるならば、女性保険を検討する価値は十分にあります。
家族や親戚に若くしてがんになった人がいるなど、個人の事情を加味した上で選ぶのがおすすめです。
⇒就職後の保険の選び方とは?? 若い社会人の保険選びの厳選ポイントはコチラ!!
2. 結婚後 ~ライフスタイルの転換点~
2-1 働き方で変わる死亡保障の必要性
結婚は心身ともに大きな変化をもたらす人生の一大イベント。住む場所や働き方まで変わることも多いので、1人暮らしや親元にいた時とはまた違ったリスクが発生してきます。
家族の形はそれぞれですが、結婚後のオーソドックスなパターンとしては(1)共稼ぎ、(2)主婦になる の2つかと思いますので、それぞれについて考えていきたいと思います。
■共稼ぎの場合
2人とも収入があるので、万が一どちらかが亡くなったとしても残された家族が生活に困るリスクは比較的小さいのが特徴です。なので、死亡保障はそれほど手厚い必要はありません。代わりに、将来子どもがほしい場合その養育資金や老後の生活資金のことも検討してみるとよいでしょう。
■主婦になる場合
夫が亡くなってしまうと生活の基盤がなくなってしまうので、夫の死亡保障は厚めにしておく必要があります。一方、妻側にはそれほど大きな死亡保障は必要なく、出産や子どもの養育資金・老後の生活費を見据えて、例えば個人年金など保障よりも貯蓄性の高い保険を検討してみるのがおすすめです。
⇒結婚は保険の見直し時! 失敗しないために知っておきたい4つのポイントはココ!
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2-2 妊娠・出産への備えをどうするか
結婚後のリスクと保険を検討する上で、必ず考えておきたいのが妊娠・出産にかかる費用についてです。
公益社団法人 国民健康保険中央会の2016年度データによると、正常分娩分の平均的な出産費用の全国平均は50万5,759円で、平均入院期間は6日間となっています。
ちなみに出産にあたっては、公的支援制度として赤ちゃん1人当たり一時金42万円を健康保険から受け取ることができます。意外に一時金額が多いことに驚かれた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、忘れてはいけないのは、妊娠・出産にかかる費用は必ずしもこれだけではないということです。例えば次のような費用が発生してきます。
・出産までの健診やそれにかかる通院費
・マタニティ用品や生まれてくる赤ちゃんのための用品準備費用
・子宮外妊娠、妊娠高血圧症候群、流産など、妊娠中にトラブルが起きた場合の治療費及び入院費
・帝王切開や吸引分娩など、異常分娩になった場合の費用及び入院費
一般病院での出産全体の約26%を占める帝王切開の場合、手術費用自体は公的保険の適応があるため、患者本人は3割負担が原則。また高額療養費(高額な医療費を払った際に払い戻しを受けられる制度)の対象にもなるため、手術費用自体の自己負担額は自然分娩に比べてそんなに多いわけではありません。ただ入院期間が長くなるため総合的な費用は高くなる場合があります。
赤ちゃんが生まれたあとはその養育費として、さらなるお金が必要になることを考えれば、ここではあまり大きな支出は避けたいところです。そこで、例えば妊娠・出産に併せて1年更新タイプの女性保険に加入し、トラブルがあった場合の支出増加に備えるという使い方もおすすめです。
⇒帝王切開は「女性特有の病気」? 女性保険の手厚い保障の範囲
2-3 夫婦一緒に考えるのがポイント
1人暮らしの時と結婚後の違いは、何より夫婦が一緒に生活を営んでいること。出産や子どもの養育は家族全体に関わってくるので、生活のリスクと保険の見直しについても、夫婦一緒に考えることが重要です。
また、女性保険では妊娠した後の加入は制限されるか、加入はできても保障内容が制限される(具体的には帝王切開など異常分娩時に保障が受けられないなど)ことがほとんどなので、妊娠・出産への備えとして加入を考えている場合は、なるべく早めに加入しておくと安心です。
3. 出産後 ~養育費用確保を中心に~
3-1 死亡保障の重要性が上昇
子どもが生まれると生活はまたがらりと変わり、多くの場合「子どもをしっかり育て上げること」が家庭の最重要事項になります。すると重要度を増してくるのが、万が一の際に夫婦のどちらか亡くなってしまった時の備えです。
子育ては2人がかりでも大変なもの。稼ぎ頭が亡くなれば残された家族の生活に影響がでます。もちろん共稼ぎの一方や専業主婦が亡くなった場合でも、残された家族に対する負担は大きく増えることになります。
例えば、共稼ぎでお互いの年収が400万円だとした場合、合わせた年収は800万円。将来の子どもの養育費についても、この前提でプランを立てているはずです。片方が亡くなってしまえば、将来のプラン設計にも大きな誤差が生じてしまいます。
特に子どもが小さい頃に専業主婦が亡くなれば、残された夫はフルタイムで働きつつ1人で子育てをしなければなりません。当然、保育園の延長保育やベビーシッター、病児保育などを頼まなければいけないことも多いでしょうし、その分の費用もかかります。
夫婦の片方が亡くなった場合、後の人生の悲しみや子育ての大変さはどうしようもありませんが、金銭面だけでも余裕があると少しは安心して過ごせるのではないでしょうか。
⇒死亡保険はどう選ぶ?? 基本の「キ」から分かりやすく徹底解説!!
3-2 女性特有のがんへの備えを考える
また、万が一病気になってしまった時の備えをしておくことも重要な意味を持ちます。というのも、病気の治療に高額な費用がかかる場合、子どもの養育などに回せるはずだったお金を使わなければならなくなる可能性があるからです。
中でも意識しておきたいのが、先にお話した通り40代~50代で発症率のピークを迎える乳がん、子宮がんなどへのリスクです。
国立研究開発法人国立がん研究センターが発表した2021年のがん罹患数予測(新たにがんと診断される数)によると、1年間で新たに乳がんと診断されるのは9万4,400件、子宮がんは2万8,600件。女性全体での罹患数を見ると第1位、第5位の多さです。
また、公益財団法人がん研究振興財団の「がんの統計'18」によれば、40~49歳ではがんにかかる女性中、約2人に1人が乳がんとなっています。
2021年のがん罹患数予測(女性)
部位 | 患者数 | |
1位 | 乳房 | 94,400 |
2位 | 大腸 | 68,000 |
3位 | 肺 | 42,100 |
4位 | 胃 | 40,500 |
5位 | 子宮 | 28,600 |
6位 | 膵臓 | 21,600 |
7位 | 悪性リンパ腫 | 17,100 |
8位 | 甲状腺 | 13,800 |
9位 | 卵巣 | 13,100 |
10位 | 肝臓 | 12,700 |
出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス~がん統計予測~
1.がん罹患数予測(2021年)」より作成